『愛を知らない』一木けいさん

「わたしがそのときいちばんつらかったのは、ただその人が憎いだけじゃないってことだった」

「それで、その人のすべてを、わたしの中の引き出しに分けることにしたの。たしかに大事にしてもらった。愛をもらった。守ってもらった。つらいときに優しくしてくれた。情に厚くて、セクシーで、すごく魅力的な人。だけど、そのよい方ばかりに目を向けると、つらくなっちゃうのよ。そんな人に対してこんなことを思う自分がろくでなしに思えて。だから、自分の中のぜんぶの感情を認めて、分けたの」

「恩にも、時効はあっていいと思うのよ」

一木さんの作品は、最終的にわかりやすい救いがあるわけじゃないんだけど、少しだけ浮上する感じがいい。ハッピーエンドが好きだけど、ハッピーすぎると作り物感が強くなるから。

『愛を知らない』一木けい
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