非日常が日常になる

確定申告の時にまとめて処理するのは負担が大きいなと思い、今年からこまめに経費や売り上げを会計ソフトに入力するようになった。今日、3月分の経理処理をした。カフェやファミレスで作業した時の領収書を、不思議な気持ちで眺める。つい1ヶ月前までは、普通に電車に乗って外出して、マスクを付けずに街中を歩き、カフェで作業をしていたんだよな……と、まるで遠い昔のことのように思えた。

モバイルsuicaの履歴データを保存しようとマイページにログインした。最終履歴は、3/24。取材で電車に乗った日だ。その日を最後に仕事はすべてオンラインに切り替え、日用品の買い出しなど最低限の用事以外の外出はしなくなった。今後も電車に乗らない生活は続くので、最終利用日はしばらく3/24のままだろう。セルフロックダウン開始から、今日で約3週間となる。

先日、地元・浅草で7月に開催予定だった隅田川花火大会が中止になったとのニュースを見た。隅田川花火大会は家族の例年行事で、花火が見える親戚の家にみんなで集まり、ワイワイと花火を見るのが毎年の楽しみだった。そうか、今年はないのか……と残念に思うのと同時に、「少なくとも夏までにこの状況が収束することはないんだ」と、改めて感じた。というかそもそも、7月開催のオリンピックが延期になった時点で気づくべきだったんだけど。

早くこの状況が収束して欲しいと漠然と願う中、「じゃあ、一体いつまでに収束するのか」と明確に考えていなかった……というか、考えるのをあえて避けていたのかもしれない。隅田川の花火が中止になって、あぁ家族にもしばらく会えないなと思ったら、うっすら見えていたけど見ないふりをしていたものが目の前に突きつけられた感じ。

いつまで続くのか、それはわからない。ただ、日本は諸外国と比べて、収束までの期間は長くなるんだろうな、とは思う。日本では海外のロックダウンのような厳しい外出制限はされず、緊急事態宣言は全国ではなく限定的で自治体ごとに対応にばらつきがあり、国は「事業者への休業補償は現実的でない」と言い、リモートへ移行できない企業も多く、朝の電車はいまだに混雑している。
東京の飲食店は営業時間短縮要請(20時まで)が出ており、多くの店がそれに従っているようだが、短縮要請が出ていない埼玉の居酒屋へ人が流れているらしい。いつもよりも客が多い、土日は満席……なんて店もあるとの報道も見た。

アメリカやフランス、イタリアなど、外出制限を行っている各国では、外出禁止を破ると罰金がある。マレーシアでは警官の制止を無視してジョギングし続けた日本人が一時逮捕されたらしいし、インドでは外出禁止を破った人は警察官に棒でぶっ叩かれたり、スクワットをさせられたりしている。日本は私権制限に食い込むような政策を打ち出すことはないし、棒で叩くなど実力行使は行われない。国民の自由意志が尊重されるのは、平常時にはとても良いことだけど、今回のケースにおいては、残念ながらマイナスの方向に働いてしまうのではと思っている。

日本の「要請」に罰則はなく、「ゆるやかな自粛要請」にとどまる。すると、街中や電車内での接触は諸外国のように一気に減らせないから、収束までの期間も長引くんだろうな、と。あくまでも、素人考えの私見だけど。

欧州の中でも厳しい外出制限をしているフランスでは、3/17からロックダウンを開始していて、4/14にあと4週間延長するとの発表があった。ロックダウン開始から約1ヶ月たち、感染者や死者の増加ペースは緩やかになっているものの、いまだ集中治療室には6000人以上の患者がいる。「大規模なイベントについては少なくとも7月中旬までは開催できない」とも言われているそう。おそらく、4週間後にはロックダウンの再延長が宣言されるのだろう。

日本で緊急事態宣言が出されたのは4/7。フランスほどの厳しい制限ではないから、1ヶ月後に同じペースで感染者や死者の増加が緩やかになるのか? というのは疑問。もちろん、医療体制の違いもあるから一概に比較はできないけれど。

2020年がこんな年になろうとは、まったく想像していなかった。非日常も、長く続けば日常になる。思うように出かけられない、外出時にはマスクとメガネで完全防備、帰宅時には念入りに手洗いをして、家の中で運動をして健康維持に努める……という状況にも、そのうち慣れるのだろう。

「自由に外出できるようになったらやりたいこと」は、あまり考えないようにしている。家で過ごす日常を何とか彩ろうと、花を飾ったり、コーヒーやお茶を揃えたり、ギターを弾いてみたりしている。

今日一日を、まずは心地よく。