【脚本担当】note×テレ東ドラマ企画「100文字アイデアをドラマにした!」脚本採用から執筆、放送までの流れと感想

2019年12月某日。メール画面を見ながら、私は固まっていた。

「中村さんのシナリオを、第1話のドラマ化作品とさせていただくことに決まりました!」

へっ?!?!?!?!?!?!?!?!?!

驚きながらも、まず送信元メールアドレスのドメインを確認した。コンテストの応募シナリオは一般公開されているので、第三者がピースオブケイク社の名を語ってメールを送ることもできるだろう、と思ったから。(クレカ会社の支払い通知を装った詐欺メールが流行っているというニュースを聞いたばかりだったので、用心深くなっていた)

確認したところ、ピースオブケイク社の企業サイトと同じドメインだったので、ひと安心。内容を改めて見てみると、「今週末に脚本会議をやるので参加可否をお知らせください」とのこと。参加の旨、返信をした。

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「100文字アイデアをドラマにした!」は、note×テレビ東京が合同で開催したコンテストで募ったシナリオを元に作られたドラマだ。noteユーザーからまず100文字のドラマアイデアを募集、そこから3つほどアイデアを選定したのち、選定された100文字アイデアを元にした脚本をnoteユーザーから募集してそれをドラマにする、というもの。

私は1月放送分の脚本に応募していた。大麦こむぎさんの「月がきれいですね」という100文字テーマに沿って、シナリオを書いた。

普段はライターとして取材記事をメインに書いているが、「フィクションを書いてみたい」という気持ちが元々あった。そんな時にこのコンテストを見つけて応募してみた、という流れだった。

ただ正直なところ、「応募」と言っても、普段からよくnoteで開催されている「お題企画」に投稿するくらいの気軽な気持ちだった。どうせ選ばれないだろう、とも思っていた。生まれてこの方、「コンテスト」というもので受賞した経験はなかったからだ。

脚本会議への参加の旨メールを送ったあと、「こんなことってあるんだなぁ」と、しばし放心。

脚本会議って、何するんだろう。ダメ出しとかされるのかなぁ……。脚本を書いたのも初めてなら、脚本会議なるものに参加するのも初めてなので、想像もつかなかった。しかも普段ドラマや映画をまったく見ないので(活字中毒ゆえ)、「あのドラマのこのシーンっぽく……」とか、そんな話が出たらついていけないな〜やばいな〜〜と思いつつ、ひとまずテレビ東京のウィキペディアページで過去のドラマ作品をチェックした。

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脚本会議当日。その日は体調がめちゃくちゃ悪かった上、午前中の会議だったのに朝ごはんを食べそこねてしまった。さらに大人数の知らない方々に囲まれた緊張もあってか、会議冒頭でひっそりと貧血を起こした(周りの方にはバレていなかった、はず)。とりあえず血糖値をあげようと、チョコを食べながら会議に参加。初対面の方々との打ち合わせでいきなりお菓子を食べ始めるのは少し恥ずかしかったが、ぶっ倒れるよりはマシかなと思い……。

会議では、プロデューサーさんや作家さんたちから、応募シナリオに対して「撮影場所の都合もあり、喫茶店のみで話が進むようにしたい」「日替わりは少なく」「『好き』の言い換えのセリフをもっと独特な言い回しに」などのフィードバックをいただいた。厳しいダメ出しはなく、むしろめちゃくちゃ気をつかっていただいた感じでありがたかった。

「このあと、プロの脚本家が引き取って仕上げることも可能だが、脚本書いてみますか?」と聞かれたので、是非! と、書かせていただくことに。だってこんな機会、滅多にない。書かない理由なんてない。
土曜の会議の内容を受けて月曜20時〆で修正稿を提出→メールでフィードバックをいただく→さらに修正して火曜に提出したものでFIX、という流れで完成した最終稿がこちら。

ドラマは1月6日の深夜に放送された。ドキドキしながらテレビを見ていたら、自分のnoteアカウントのアイコンが映り、「今回採用したのは中村英里さんの脚本です」と、ナレーションで名前を呼ばれてびっくりした。自分が考えたセリフを俳優さんたちが喋っているのは、なんだか不思議な感覚だった。エンドロールの「脚本」のところに自分の名前が載っていたのが嬉しくて、写真も撮った。

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「コンテストで受賞したことがなかった」と書いたけれど、それは応募をしてこなかったからだ。結果が約束されていないものに対して努力をするのは怖かった。「やっぱり選ばれなかった」と落ち込むのは嫌だった。失敗した姿を見られるのは恥ずかしい、とも思っていた。

「選ばれる」なんて特別な人にしか起こらないことで、まるで別の世界の出来事のように、自分には縁のないことだと思っていた。けれど、今回シナリオが選ばれて、「あっ、自分にもこういうことが起こるんだ」と、単純に驚いた。同じ世界線で起きていることだったんだ、と。

「宝くじは買わなきゃ当たらないよ」と言われても、買う気にはなれなかった。何万分の一の確率のものが当たる訳ないじゃんと思っていたから。でも、実際に世の中には当選して億単位のお金を手に入れている人もいるわけで。行動を起こしたもん勝ちなんだろうな、と思う。

脚本の勉強を元々していた訳ではなく、ビギナーズラックで採用してもらえただけなので、「これがきっかけで売れっ子脚本家に?!」みたいな、それこそドラマのような展開は起こらない。私は今日も、細々と取材原稿を書いている。

変わらない日常の中で少しだけ変わったことと言えば、小説を書き始めたことだろうか。脚本を書いてみて「物語を考えるのって楽しいなぁ」と改めて感じた。以前、短い小説をいくつか書いたこともあったけど、どこかに発表することも、応募することもしなかった。今度は、書き上げられたら、どこかに応募してみようと思っている。もちろん、箸にも棒にもかからない可能性のほうが高いけど、それでも「動いてみよう」と思えるようになったのは、ちょっとした進歩なんじゃないか。

素晴らしい機会をいただけたことに感謝。そして、noteって夢があるプラットフォームだな〜と改めて思いました。

ちなみに、ドラマを見た親戚(60overの伯母・はっきり物を言う性格)からは、「感想をメールで送ろうと思ったんだけど話がよくわからなくて、感想の書きようがなかった! でも一応見たわよ!」と言われました。若い人の感覚はもうわかんないわぁ〜と言っていたけど、多分伯母的には面白くなかったんだろうな……(笑)。精進します。