本記事はnote×テレビ東京のドラマ企画「100文字アイデアをドラマにした!」の応募作です。
元となった100文字アイデア
「どーしよっかなぁー」
マユ(24歳ぐらい)OLはマッチングアップリのような男性顔写真の羅列されたページを見ながら迷っていた。
「今月は、ユーキにするか」タイトル サブスク彼氏
サブスクリプション彼氏。
彼氏も一定料金を払えば選び放題、グレードアップも勝手にされる。
支払い金額によりいろんなグレードやら、オプションやらで遊べそう。
そもそも恋はどうあるべきかとかに落とせそうなお話です
あとは、単純にイケメンいっぱい選べる楽しさ!
登場人物
マユ:24歳OL。勝気な性格で彼氏のケイタを尻に敷いている。
リョウコ:マユと同期、会社の同僚。
ユーキ:マユのサブスク彼氏。実はリョウコの彼氏。
ケイタ:マユの彼氏。サブスク彼氏に登録している。
サブスク彼氏サービスイメージ
・AIで趣味趣向合う人をレコメンドしてくれる
・デザインはダサめ、カラフルなイメージ
・メッセージ機能あり
・「映画デート」などオプションあり
・わりと使っている人はいるが、彼氏彼女がいる人は使わない、的な立ち位置のアプリ(感覚的にはマッチングアプリみたいな)
あらすじ
学生のころから4年付き合っている彼氏・ケイタとの関係にマンネリ感を覚えているマユ。いつものように「サブスク彼氏」を使っていたら、ケイタがサブスク彼氏に登録しているのを見つける。友達のリョウコに頼み、ケイタのサブスク彼氏現場を押さえようとするマユ。しかし、待ち合わせに現れたいつもと違ってイキイキとした様子のケイタを見て、「本当の姿はどっちなの?」と不安になる。
後日、お気に入りのサブスク彼氏・ユーキとデート中、リョウコと遭遇。「ユーキは私の彼氏!」と言われて驚いていると、そこにケイタも現れ、4人でモメた後、ケイタと2人で話し合うことに。そこでケイタの心の内を知る。
シーン1:マユとリョウコ・会社の休憩室(ランチ)
マユ、スマホを眺めている。
マユ「今月は、ユーキにするか」
アプリ画面の映像に重ねてマユモノローグ
マユM「『サブスク彼氏』は、月額料金を払えば好きな男性が選び放題な夢のようなサービス! 自分の情報を登録すると、AIが趣味の合う人をお勧めしてくれるからハズレもないし、気に入って使ってる」
リョウコ、お弁当を持って登場。マユはずっとスマホをいじっている。
リョウコ「マユ、お疲れ! またサブスク彼氏? ようやるね〜本命彼氏にバレたらまずいんじゃないの?」
マユ「大丈夫、バレないようにしてるから。それに本命って言っても、もはや惰性で付き合ってるからさぁ、マンネリっていうの?」
リョウコ「学生の時から付き合ってるんだっけ?」
マユ「そう、もう4年になるかな。あいつさ、話しかけても『へぇ』とか『うん』みたいな返事しかしないからさぁ、気の抜けたコーラっていうか、お茶の出がらしっていうか、まぁ一緒にいて新鮮味がないのよね……えっ?!」
スマホ画面を見て固まるマユ。
リョウコ「どうしたの?」
マユ「……ケイタが、サブスク彼氏に登録してる」
リョウコ「へ?!」
2人で画面をじっと見つめる。そこには、マユの彼氏・ケイタの姿が。
マユ「髪型も違うしメガネもつけてないけど、これ絶対ケイタだわ……嘘でしょ……?!」
リョウコ「しかも、レート高くない? 評価コメントも100件近くあるし。登録歴2年……2年前からやってるってこと?」
マユ「あいつ……信じらんない! 彼女がいるのに他の女と会ってるってどういうことよ!」
悔しそうな表情のマユ、リョウコの方を向いて、
マユ「リョウコもサブスク彼氏登録してたよね? お願い、ケイタとコンタクト取って探ってくれない?」
リョウコ「えっ私が? なんで、やだよ! 彼氏にバレたら気まずいし」
マユ「そしたら私がちゃんと事情説明するから! メッセージのやり取りだけでいいから、ねぇ〜〜〜一生のお願い!!」
リョウコ「……わかったよ」
何度もお願いするマユに押し切られ、苦笑しながらリョウコはスマホを開く。
リョウコ「ええっとケイタ、ケイタ……あ、いた。なになに、海外の大学を卒業後、現在は外資系コンサルティング会社勤務。刺激のない毎日を変えたくてサブスク彼氏を始めました……だって」
マユ「はぁ〜? 嘘ばっか!」
リョウコ「とりあえずメッセージ送ってみるわ。『こんにちは、今月の枠はまだ空いていますか』と……」
リョウコ、スマホでメッセージを打つ。打ち終わってすぐ、着信音が鳴る。
リョウコ「お、もう返ってきた!」
マユ「まじ? 私からの連絡には何時間も返事しないくせに!」
リョウコ「『リョウコさんこんにちは、まだ空いていますよ! ぜひよろしくお願いします』だって」
マユ「よし、かかった! じゃあ『彼女はいますか?』って聞いてみて」
リョウコ、スマホで「ケイタさん素敵ですね、彼女いるんですか?」とメッセージを打つ(アプリメッセージ画面の映像)。すぐに返事がくる。
リョウコ「『まさか! 彼女がいたらサブスク彼氏なんてやらないよ』って」
マユ「(苛立ちながら)フン! じゃあ、好みのタイプとか聞いてみて」
リョウコ、スマホで「ケイタさんはどんな女性が好みなんですか?」と打つ(アプリメッセージ画面の映像)。またすぐに返事がくる。
マユ、スマホ画面を覗き込んで怒りながら
マユ「『おしとやかな雰囲気の人かな』って、何よ、私へのあてつけ?! どうせ私はがさつな女よ!」
リョウコ「まぁまぁ……」
マユ「リョウコ! お願い、ケイタと会ってくれない? サブスク彼氏の現場を押さえて、言い逃れできない状況で問い詰めてやる! 私をバカにして、許さない!」
リョウコ「はぁ〜? ムリムリ、さすがにムリ!」
マユ「リョウコ〜〜〜、一生のお願いだから!!」
リョウコ「一生のお願い何回使うのよ?!」
リョウコ、結局マユに押し切られ、ケイタと会うことに。
シーン2:リョウコ×ケイタのデート
カフェでリョウコを待つケイタ。そこにリョウコが合流。変装した姿(サングラスにヅラみたいな明らかに怪しい感じだといいかなと)で近くの席からその様子を伺うマユ。
ケイタ「リョウコさん、初めまして! リョウコさんは、サブスク彼氏よく使ってるの?」
リョウコ「うーん、たまに。ケイタさんは、サブスク彼氏歴長いみたいだね」
ケイタ「うん、もう2年くらいかな。でも、リョウコさんみたいな素敵な人にはなかなか当たらないから、今日はラッキーだな」
リョウコ「えっ、そんなぁ」
褒められて照れるリョウコ。その会話を聞きながら、イライラした様子のマユ。
マユM「何よ、いつもはオドオドしてるくせに、自信満々にふるまっちゃって!」
ケイタ「オプションで『映画デート』を付けてくれてたよね。何か観たいものある?」
リョウコ「ううん、ケイタさんに任せる」
ケイタ「そしたら、ベタだけど恋愛映画はどう? パリが舞台の作品で、原作の小説も読んだけど、面白かったよ」
リョウコ「あ、今人気のやつだよね。じゃあそれで!」
カフェから出るケイタとリョウコ。
マユ、店内で2人を見送り、複雑な表情でため息をつき、独り言をつぶやく。
マユ「恋愛映画ってなによ……ミニシアターでしか上映されてないような、マニアックな映画が好きなんじゃなかったの?」
マユ、ハッと我に返り、2人の後を追ってカフェを出る。
ケイタとリョウコのデートシーン(映像のみ)。自信たっぷり、堂々とした雰囲気でリョウコをエスコートするケイタの様子を、隠れながら見つめるマユ。
スマホを取り出し、ケイタのプロフィールページを見る。「サブスク彼氏歴2年」の文字と、評価コメント「楽しかったです!」「また会いたいな」を眺めて、複雑な表情。
マユM「私といる時と全然違う。どっちが本当のケイタなの……?」
シーン3:マユ×ユーキのデート(途中でケイタとリョウコも乱入)
マユ、サブスク彼氏のユーキとデート中。並んで歩きながら、ユーキに勢いよくケイタの愚痴を言っている。
マユ「普段と全然雰囲気が違うのよ。いつもはメガネにボサボサ頭なのに、ピシっと髪も整えちゃってさ。すごい堂々とした雰囲気で、喋り方もいつもよりハキハキしてて。しかも、サブスク彼氏歴2年! うちら4年付き合ってるんだよ? なんかもう、騙された気分。ねぇ、どっちが本当の彼なんだと思う?」
ユーキ「そうだなぁ、彼氏さんのことを知らないから何とも言えないけど……何か事情があるのかもしれないし、あんまり責めないで、まずは彼氏さんの話を聞いてみるしかないんじゃないかな。」
優しく諭すユーキ。マユ、甘えた口調でユーキに腕を絡めながら、
マユ「ユーキは優しいなぁ。そうだね、この後合う予定だから、聞いてみるしかないかな……」
そこへリョウコが通りかかる。
リョウコ「ユーキ、マユ……何してるの? え、どういうこと?」
呆然とした様子のリョウコ、固まるユーキ。マユは状況が飲み込めずキョトンとしている。
マユ「知り合いなの? えぇっと、ユーキは私の今月のサブスク彼氏だよ」
リョウコ「……ユーキは私の彼氏だから!」
マユ「はっ???」
リョウコ「ユーキ、どういうこと? 私と付き合うことになったから、サブスク彼氏はもう辞めるって言ってたじゃん!」
ユーキ「いや、あの、その……」
リョウコ「何よその頭! 変装のつもり?」
リョウコ、ユーキの頭につかみかかると、ずるりとウィッグが脱げ、ネットをかぶった頭(地毛短い)があらわになる。
リョウコ、ウィッグをふりまわしながら、ユーキに詰め寄る。
リョウコ「わざわざこんなもの被ってたってことは、見つからないようにするためでしょ? 見つからなかったらずっと続けるつもりだったの? 信じらんない!!」
ユーキ「ごめん、ごめんって」
怒るリョウコ、平謝りのユーキ、戸惑った様子で2人を見守るマユ。
そこに、ケイタも登場。(普段通りのメガネ+ボサボサ頭)
ケイタ「あれ、マユ……に、リョウコさん、え?」
マユ「え、なんで? 待ち合わせ1時間後でしょ」
ケイタ「早めに着いたから散歩してたんだけど……え、これどういう状況?」
マユ、不穏な雰囲気に耐えかねて叫ぶ。
マユ「あーーーもうなんなのよ!!! そうだ、元はといえばあんたがサブスク彼氏なんかに登録してるから悪いのよ!」
ケイタ「えっなんでそれを……」
マユ「リョウコは私の友達! 頼んで探ってもらったの! そしたら何よ、髪もしっかりセットしちゃってさ、恋愛モノの映画なんか観に行きやがって! 彼女がいるのにサブスク彼氏に登録するなんて最低!」
リョウコ「ちょっと待ってよマユ、自分のこと棚に上げてない?」
マユ「え?」
リョウコ「自分だって彼氏がいるのに、サブスク彼氏で他の男とデートしてたじゃん。私の彼氏にまで手ぇ出してさ?『騙された!』とか被害者ヅラしてるけど、自分だって似たようなことしてるんじゃないの?
マユって自分のことばっかりだよね。少しはケイタさんの気持ちも考えてあげたら? そんなだから他の女と遊ばれるんだよ!」
マユ「は? 自分のこと棚に上げてるのはそっちじゃないの? ユーキはリョウコと付き合ってるのに、サブスク彼氏続けてたんでしょ? それってリョウコじゃ物足りないってことなんじゃないの?」
リョウコ「何よそれ!」
マユとリョウコ、掴み合いの喧嘩に発展したところでユーキとケイタが止めに入る。
ケイタ「マユ、とりあえず2人で話そう。ね?」
マユ「……わかった」
シーン4:マユとケイタの話し合い(カフェ)
マユ「……なんでサブスク彼氏なんてやってるの?」
ケイタ「……(気まずそうに沈黙)」
マユ「私がこんなだから? 気が強くてガサツで、いつもケイタのことを尻に敷いてて? だから他の女と遊んでたんだ?」
ケイタ「ん、まぁそんなとこ……」
マユ「全部私に言わせないでよ! ケイタっていつもそうだよね。自分の意見はないの? ケイタの言葉でちゃんと言ってよ!」
ケイタ「……俺の言葉をいつもさえぎってたのは、マユだよ」
マユ「え?」
ケイタ「自分の意見がないわけじゃない。言えなかったんだよ。だってマユは譲らないから。だから段々、合わせたほうが楽だって思うようになった」
マユ「何よ、それ……」
ケイタ「サブスク彼氏を始めた理由は、マユが言ったとおり。俺だってさ、ずっと言われっぱなしじゃヘコむこともあるんだよ。最初は気晴らしにちょっとやってみるか、ってくらいだったけど、いつもと違う自分を演じるのが楽しくなってきて、気付いたらけっこう長くやってたな」
マユ「……ショックだったよ、2年もサブスク彼氏やってたなんて」
ケイタ「マユはなんでサブスク彼氏使ってたの? さっき一緒にいた男、あれサブスク彼氏でしょ」
マユ「私は……ケイタと付き合って4年で、ちょっと、刺激が足りなくなったというか……」
ケイタ「俺に飽きたってことでしょ? マユはさ、いつも自分中心だよね。俺が言える立場じゃないけど、マユが他の男と遊んでたら俺が悲しむかも、なんて思わなかったでしょ?」
マユ「思わなかった……でも、ケイタだって……」
ケイタ「俺は、もしバレたらマユはショックを受けるかもなって考えてたよ。本当はさ、ショック受けて欲しかったんだよ、多分。なんとなく学生のノリで付き合っただけで、マユは俺のことなんとも思ってないんじゃないか? って、ずっと思ってたから」
マユ「そんなことない! ケイタがサブスク彼氏やってるって知ったとき、最初はムカついた。だからリョウコに頼んでデートしてもらって、サブスク彼氏の現場を押さえて文句言ってやる! って思ってたの。でも、リョウコと一緒にいる時のケイタは、私といるときよりも楽しそうで。なんかさ、すごい悲しくなったんだよね。こっちが本当のケイタで、私と一緒にいるのが嫌になったんじゃないかって」
ケイタ「そんなことないよ」
マユとケイタ、しばらく無言で見つめ合う。
マユ「……もう私、サブスク彼氏使うのやめる。だからケイタにも、サブスク彼氏やめてほしい。あと、今日みたいに思ってることをちゃんと言ってほしい。私も、自己中にならないように、気をつけるから」
ケイタ「わかった」
マユとケイタ、2人ともサブスク彼氏のアプリを削除する。
カフェを出て歩きながら会話する2人。
マユ「ねぇ! 『ケイタさんはどんな女性が好みなんですか』?」
ケイタ「え? ……そうだな、ちょっと気が強いけど、一緒にいて飽きない子かな」
マユ「じゃあ、好きな映画のジャンルは?」
ケイタ「ミニシアターでやってるようなマニアックなやつ」
マユ「だよね! そういえば、サブスク彼氏バージョンのケイタ、なかなかよかったよ。普段からメガネやめて髪もセットしたら?」
ケイタ「ううん、このままで。こっちが俺の、本当の姿だから」
マユ、満足げに微笑んでケイタと手をつなぐ。笑顔で歩いていく2人。
<おわり>