【2020.1.6 テレビ東京にて放映】「100文字アイデアをドラマにした!」〜彼女は好きが言えない〜第一話「喫茶店」ドラマシナリオ 最終稿

本記事は、note×テレビ東京合同ドラマ企画「100文字アイデアをドラマにした!」(noteユーザーから募集したアイデアをドラマ化する企画)にてドラマ化された脚本です。

応募作採用の連絡をいただいたあと、テレビ東京さんとの脚本会議に参加。
その際に「このあとはプロの脚本家が引き取って仕上げることも可能だが、最後まで書いてみますか?」と言っていただけたので、「是非書いてみたい!」ということで、いただいたフィードバックを元に、最終稿まで書かせていただきました。

脚本公開について、note社&テレビ東京さんに脚本掲載の許可はいただいています。

※応募作はこちら

「100文字アイデアをドラマにした!」予告動画と各種リリース

〜彼女は好きが言えない〜第一話「喫茶店」 登場人物

佐藤ミオ:大学二年生、二十歳。熱狂的にハマるタイプ
鈴木:ミオと同い年、バイト仲間。鈍い、ミオの気持ちになかな気づかない
高梨:バイト先の喫茶店常連。アルツハイマーの夫がいる
サトミ:ミオの友人

○シーン1:喫茶店バックヤード

 喫茶店の制服姿のミオ、私服のサトミ。
 スマホ画面を眺めながら喋る二人。(ずっとスマホ見ながら会話)

ミオ 「いやぁ、やっぱり椎名くん(アイドル)はかっこいいなぁ……この画像だけでもう満足っ、お腹いっぱい! 一週間は何も食べなくてもいーわ」

サトミ 「お、一週間出ました〜。私は、まぁもって三日かな。椎名くんは顔がイマイチ好みじゃないんだよねぇ」

ミオ 「え、まじで言ってる?」

 辞書から「好き」の文字が消えていく映像に重ねて、ミオのモノローグ。

ミオM 「今からおよそ数百年前。日本から、ある言葉がなくなった。言葉がなくなって以来、私たちはいろんな言い方で自分の思いを表現するようになっていた」

ミオ 「あ! 来週、『僕らはきっと』の新刊出るらしい! やばい絶対買う!」

 スマホ画面(ネットニュースか何か)を見ながら興奮した様子で言うミオ。

サトミ 「何だっけそれ、漫画?」

 自分のスマホを見たまま、興味なさげに返事をするサトミ。
 スマホから顔をあげ、サトミのほうに顔を向けてミオは言葉を続ける。

ミオ 「そう! 単行本には書き下ろしのあとがき漫画とか、『最近きしめんにハマってます』みたいな先生の近況コメントとかが載ってて、もうファンとしては琵琶湖の水が一瞬で干上がっちゃうんじゃないか? ってくらい熱い気持ちが燃えたぎってるわけですよ!」

 楽しみな気持ちをおさえきれず、嬉しそうに早口でまくし立てるミオ。
 サトミ、興味なさげにミオの話を流し、話題を変える。

サトミ 「へぇ〜。あっミオ、そろそろ時間じゃない?」

ミオ 「ほんとだ、行かないと」

 エプロンや名札をつけ、バイトの支度をするミオ。鏡で髪型をチェックする。
 (鈴木が「佐藤」と呼ぶので、ミオの苗字がこの時点で見ている人にわかるようにミオの胸の名札「佐藤」が映るようにする)

サトミ 「じゃあ私は帰ろうかな。そういえば、最近髪巻いてる日多いよね。メイクも気合い入ってるし」

ミオ 「え? うーん、そう?」

サトミ 「何? なんかあるの?」

ミオ 「別に! じゃあね、おつかれ!」

 サトミの質問には答えずに勢いよく休憩室を出るミオ。

○シーン2:喫茶店

 高梨が席に座っておいしそうにコーヒーを飲んでいるところへ、ミオが話しかけにいく。

ミオ 「高梨さん、こんにちは! かなり久しぶりですね、忙しかったんですか?」

高梨 「うん、ちょっとね……」

 ミオ、高梨のスマホ画面がふと見える。パジャマを着ている高梨の夫の写真が。高梨、ミオの視線に気付き、

高梨 「実はうちの人、少し前にアルツハイマーで施設に入ったのよ。」

ミオ 「えっ! 前に一緒に来ていたときは、そんな風に見えませんでしたけど」

高梨 「最近急にね、昔のことをどんどん忘れていて。この間なんて、私の名前が思い出せなくなっちゃったのよ? こっちをじっと見ながら『えぇっと……』って、困ったような顔をしてね。そのあとすぐに思い出したけど、あの時は怖かったなぁ。このまま忘れられちゃうんじゃないか、ってね」

ミオ 「そうなんですね……」

 沈黙。高梨、向かいの空席を見る。

ミオ 「いつも二人で来てましたもんね」

高梨 「もう何十年もね。プロポーズもこのお店だったんだから」

ミオ 「前に言ってましたよね。しかも旦那さんからじゃなく、高梨さんから! すごいなぁって思いましたよ」

高梨 「そんなことまで話したんだっけ?」

 恥ずかしそうに笑う高梨。

ミオ 「そういえば、プロポーズの言葉ってなんだったんですか? 気になる!」

高梨 「プロポーズはね」

 向かいの空席を眺めながら、ゆっくりと語り出す高梨。

高梨 「あの人、コーヒーに詳しくてね。この店でよくウンチクを聞かされたんだけど、ある日『オールドコーヒーって知ってる?』って聞かれて」

ミオ 「オールドコーヒー?」

高梨 「生豆を何年も熟成させたコーヒーのこと。年月が深みとなって、コーヒーの香りやコクが増すみたいなの」

ミオ 「へぇ〜」

高梨 「年月が深みとなるって素敵ね、って言ったら、『君はそういう年の取り方をできる人だと思うよ』って言われて、すごく嬉しくてね。
思わず、『じゃあ、熟成を重ねてどんどんおいしくなる私と、これからもずっと一緒に年を重ねてみない?』って聞いたの。そしたら、『もちろん、喜んで』って」

ミオ 「えーーーオシャレ! 特別なシチュエーションじゃなくて、日常の中でサラっと言う感じって憧れるなぁ」

高梨 「そう? 彼には後から『ちゃんとしたプロポーズを自分からしようと思ってたのに』って言われたのよ。色々計画してたみたい」

 コーヒーを飲み干し、カップを見つめて小さな声でつぶやく。

高梨 「……この話も、もう忘れてしまったかもしれないけど」

ミオ 「え? 何ですか?」

 高梨の声を聞き取れず聞きかえすミオ。

高梨 「ううん、なんでもない。来週、結婚記念日なの。旦那の具合が良かったら、二人でここに来ようかな」

ミオ 「ぜひ!」

高梨 「そういえば、ミオちゃん雰囲気変わったね。大人っぽくなった。髪型変わったからかな?」

ミオ 「そうですか?」

 褒められてうれしそうなミオ。そこへバイトに来たばかりの鈴木(私服)がやってきて、ミオに話しかける。

鈴木 「佐藤、休憩室の鍵持ってる? キーボックスに入ってなくて」

ミオ 「あ! ごめん、また戻すの忘れてた」

 ミオ、ポケットから鍵を取り出し、鈴木に渡す。
 鈴木、ミオから鍵を受け取り、からかうように、

鈴木 「何回目だよ? まさかわざと?」

ミオ 「違うよ!」

 からかわれて少しムッとしながらも、楽しそうな様子のミオ。
 高梨に軽く会釈をしてバックヤードに向かう鈴木。その後ろ姿を嬉しそうに見つめるミオ。それを見た高梨は、何かに気づいた様子。

高梨 「あの子、鈴木くん……だっけ? 最近仲いいの?」

ミオ 「最近シフトがかぶることが多くて、前よりよくしゃべるようになりましたね」

高梨 「ふーん、そうなんだ。ミオちゃんは、鈴木くんといるときどんな気持ちになる?」

ミオ 「えっ? そうだなぁ……お腹いっぱいになる感じ、かな?」

高梨 「お腹いっぱいって?」

ミオ 「心がいっぱいに満たされて、他のものが入る隙間がなくなる、みたいな。鈴木って、推しのアイドルに、ちょっと雰囲気が似てるんですよ。だから、それと同じ感じですかね。
あ、でも最近よくしゃべるようになってからは、ちょっと違う感覚になってきたんですよね」

高梨 「どう変わったの?」

ミオ 「たまに不安になるんです。私としゃべってて楽しいのかな、とか。
でも、お腹いっぱいになる感覚は、前よりも強いんですよ。ちょっと話しただけで、それこそもう、一ヶ月ごはんを食べなくてもいいくらいに満腹! って感じになるんです。自分でもよく、わからないけど」

 自分の気持ちに気づかず、考え込むミオ。

高梨 「私も、旦那と出会ったころは、同じような気持ちだった。顔を見れるだけで幸せで、でも不安で。ふふ、懐かしいな」

ミオ 「えっ……それって……」

 ミオを見て意味ありげに微笑む高梨。そこで自身の恋愛感情を自覚するミオ。

○シーン3:喫茶店バックヤード

 スティックシュガー(他の物でも可、補充が必要な何か)を取りに、バックヤードにやってきたミオ。
 制服に着替えた鈴木は、笑顔で電話をしている。

鈴木 「ユウコもこれからバイト? うん、じゃあまた」

 鈴木、電話を切り、何事もない様子でスマホをいじる。
 ミオ、複雑な表情で、話しかけようか迷いつつ鈴木を見つめる。
 鈴木、ミオの視線に気づいて、

鈴木 「ん? どした?」

ミオ 「あ、いや……誰と電話してたのかな、って」

鈴木 「え? あぁ、同じサークルの子だよ」

ミオ 「ふーん……」

 鈴木、何か言いたげなミオの様子に気づく。

鈴木 「なに、どうしたの?」

ミオ 「鈴木ってさ、毎日でも食べたいって思う食べ物ある?」

鈴木 「え? うーん、なんだろ……カレーとか?」

ミオ 「じゃあさ、さっきの電話の子と毎日会えるのと、毎日カレーが食べれるの、どっちのほうが嬉しい?」

鈴木 「へ? なんの話?」

 きょとんとした顔でミオを見つめる鈴木。

ミオ 「えっとじゃあ、鈴木、いつもまかないでナポリタン食べてるでしょ。あのナポリタンを、もう一生食べちゃだめって言われたら、どう思う?」

鈴木 「うーん、悲しくなるかな。あのナポリタン旨いよね」

ミオ 「それって、電話してた子と一生会っちゃだめって言われるのと、どっちのほうが悲しい?」

鈴木 「だからなんの話? 何が言いたいの?」

 鈴木、ミオの気持ちに気づかない。
 言いたいことが伝わらず、もどかしい気持ちで言葉を続けるミオ。

ミオ 「私は……鈴木としゃべってると、お腹いっぱいになるの!」

鈴木 「え?」

ミオ 「私が言ったことで鈴木が笑ってくれた時なんかは、一ヶ月分は食べた気になるんだよね。も〜〜満腹! みたいな。わかる?」

鈴木 「いや、全然わかんないんだけど……?」

 ミオが何を言いたいのかわからず、戸惑う鈴木。

ミオ 「だから! 鈴木とシフトが一緒の日は、十キロのコーヒー豆を片手で持ちあげられちゃうくらいやる気に満ち溢れるし、バイト中に鈴木と目が合うとカーッと顔が熱くなって、その熱気でコーヒー豆の焙煎ができちゃうんじゃないか? ってくらいなのよ! どう、伝わった?」

 一気にまくし立てるミオに驚きながらも、何が言いたいのかわからず戸惑う鈴木。

鈴木 「いや、わからん」

ミオ 「……もういい!」

 ミオは泣きそうな表情でバックヤードから出ていき、エプロンをつけて店内にもどる。浮かない表情で仕事をするミオの様子を、戸惑った表情で遠くから見つめる鈴木。映像に重ねてモノローグ。

ミオM 「なんて言えば、この思いが伝わるんだろう? この気持ちを一言で表せる言葉が、この世にあればいいのに」

○シーン4:喫茶店

 バイト中のミオは浮かない表情。髪は巻かず、ストレートのまま。同じくバイト中の鈴木が話しかけようとしても、気まずそうにかわす。鈴木も気まずい表情。
 そこへ、高梨が夫を連れて来店。パッと表情が明るくなり、高梨に話しかけるミオ。

ミオ 「いらっしゃいませ! 結婚記念日、今日でしたよね」

高梨 「そうなの。さぁ、席につきましょうね」

 まるで子どもをあやすかのような口ぶりで、夫をいつもの席に誘導する高梨。夫はオドオドした様子で店内を見回していて、ミオや高梨の言葉にも反応せず、無言。
 ミオ、その様子を見て戸惑うが、気を取り直して注文を取りにいく。

ミオ 「実は高梨さんのために、店長に頼んでオールドコーヒーを仕入れておいたんです。お二人がよく飲んでいた、エチオピア産の豆ですよ」

高梨 「本当に? ありがとう! じゃあ、それを2つお願い」

 コーヒーを2つ、高梨のもとへ運ぶミオ。

ミオ 「はい、どうぞ」

高梨 「ありがとう。ほらあなた、コーヒーがきたわよ」

 じっとコーヒーを見つめる夫。静かにカップを手に取り、一口すする。相変わらず無言だが、オドオドした様子はなくなる。ほっとした様子で自分のコーヒーを飲み始める高梨。夫がカップを置き、ぽつりとつぶやく。

高梨夫 「オールドコーヒーって知ってるかい?」

高梨 「……え?」

 驚いて夫の顔を見る高梨。さっきとうって変わって落ち着いた様子で、静かに言葉を続ける夫。

高梨夫 「豆を熟成させることで、年月が深みとなって、コーヒーの香りやコクが増すんだ」

 高梨、夫の記憶が戻ったのか? と半信半疑のまま、プロポーズのときの会話と同じセリフを続ける。

高梨 「……年月が深みとなるって素敵ね」

高梨夫 「君は、そういう歳の取り方をできる人だと思うよ」

 じっと夫の目を見つめる高梨。目には涙が浮かんでいる。

高梨 「……じゃあ、熟成を重ねてどんどんおいしくなる私と、これからもずっと一緒に年を重ねてみない?」

 その言葉を聞いてふっと笑う夫。

高梨夫 「また先に言われてしまったね」

 微笑んで手を取り合う二人。その様子を遠巻きに眺めていたミオと鈴木も感動したようすで顔を見合わせて微笑む。

○シーン5:喫茶店バックヤード

 休憩室のテーブルに座っているミオと鈴木。

ミオ 「高梨さん、嬉しそうだったね」

鈴木 「あぁ。よかったな」

 しばらく沈黙。

鈴木 「あのさ、この前のことだけど」

ミオ 「うん、何?」

鈴木 「佐藤がなんで怒ってるのか、正直まだよくわかんないんだけど。でも、なんか嫌な思いさせたならごめん」

ミオ 「わかんないのに謝らないでよ」

鈴木 「いや普通わからないだろ、お腹いっぱいになるとか言われても」

ミオ 「なんでわかんないのよ?」

鈴木 「わかんないよ、でも佐藤に無視されるのはなんかむかつくんだよ」

ミオ 「は? むかつく???」

 いらついた様子で返すミオ。

鈴木 「いや、むかつくというか、えっと」

 どう表現したらいいのかわからず、戸惑いながら言葉を続ける鈴木。

鈴木 「退屈なんだよ、佐藤と喋れないと。で、なんかイライラしてくる。なんで目も合わせないんだよって、むかつく……みたいな感じかな。自分でもよく、わかんないんだけど」

 言葉につまる鈴木。思いを言葉にできないもどかしさを抱えた少し前の自分の姿と重なり、表情がやわらぐミオ。

ミオ 「それってさ、もし私と前みたいにしゃべれるようになったら、十キロのコーヒー豆の袋を片手で持ち上げられるくらい、やる気に満ち溢れる、みたいな感じじゃない?」

鈴木 「いや、片手で十キロは無理だろ」

ミオ 「あっそ」

 冷静につっこむ鈴木の言葉を聞き、ムッとした表情で返すミオ。

鈴木 「でも」

 少し間を置いたあと、ゆっくりとミオの目を見つめる鈴木。

鈴木 「俺、寒いのすげー苦手だけど。今日みたいな寒い日でも、バイト来るのが楽しみにはなるかな」

 ミオ、その言葉を聞いて、パッと顔が明るくなり、嬉しそうに聞く。

ミオ 「それ、私と会うとカーッと顔が熱くなる、みたいな? その熱気でコーヒー豆の焙煎ができちゃうんじゃないか、って感じになるってことでしょ?」

鈴木 「いや、それは大袈裟すぎる」

ミオ 「えっ? じゃあ、コーヒーミルがなくても手でメリメリメリ! って豆を砕いて粉にできるくらい、パワーが湧いてくるとか?」

鈴木 「どういう状況だよそれ(笑)」

ミオ 「違うの? そしたら……」

 声フェードアウト。ミオのたとえ話に鈴木がつっこむ、というのを繰り返している映像(声なし)にかぶせて、ミオモノローグ。

ミオM 「日本からある言葉がなくなって、およそ数百年。私たちは、オリジナルな表現で思いを伝えるようになった。たまに不便だけど、意外と悪くないかもね」

<終わり>

後日談:嬉しくて写真撮りました

テレビに自分の名前が載っているのが嬉しくて写真を撮りました(笑)。