【応募作】テレ東ドラマシナリオ 毎日が2回やってくる男・横田(テーマ:人生リハーサル)

本記事はnote×テレビ東京のドラマ企画「100文字アイデアをドラマにした!」の応募作です。

元となった100文字アイデア

他の人がどうかは知らないが私は毎日が二回ずつある。一週間で言うと、月月 火火 水水、と計14日で構成されていて、同じ出来事が二日続けて起こる。一日目はリハーサル日なのだ。
悪い事が起これば本番はそれを避ける。良い事なら繰り返す。
リハーサルのある人生は人より幸せになれるのか?

主な登場人物

横田アキラ:毎日が2回ずつある男。社会人一年目で会社を辞めひきこもりに。
真鍋薫:横田と同じく、毎日が2回ずつある男。若手起業家。

あらすじ

 毎日が2回やってくる男・横田アキラは、大学まではリハーサル日があるおかげでテストもスポーツも難なくこなし、人生余裕! と思っていた。
 社会人になると、リハーサル日の失敗を踏まえて行動してもうまくいかないことが増えてきた。横田は職場で毎日(リハーサルも本番も)失敗を繰り返し、叱責されるようになった結果、退職。
 会社を辞めてひきこもるうちに「あれ、今日は1日目、2日目どちらだっけ?」とわからなくなるくらい、代わり映えのしない毎日を送るように。たまたま見たテレビがきっかけで、横田は家を飛び出すと——。

○大学・学食

 横田アキラ、学食でラーメンを食べている。
 カレーをトレイに乗せた女子生徒2人組が、横田のほうにおしゃべりしながら歩いてくる。横田が座るテーブルに近づいてきたタイミングで、横田はラーメンを持ってスッと立ち上がり、テーブルから一歩離れる。

女子生徒A「あっ!!」

 女子生徒A、持っていたトレイをテーブルに落とし、カレーを派手にぶちまける。慌てたようすで周囲の学生に謝る。

女子生徒A「すみません!」
女子生徒B「大丈夫? 雑巾もらってくる!」

 テーブルの周囲は騒然となる。ラーメンを持ったまま立っていた横田はその様子を見てクスリと笑い、別のテーブルに移動し、余裕の表情でまたラーメンをすすり始める。その様子に重ねてナレーション。

横田N「俺は、あの時カレーが落ちてくることを知っていた。なぜなら、俺には毎日が2回ずつあるからだ。俺の一週間は、月月・火火・木木、と計14日で構成されていて、同じ出来事が2回続けて起こる。つまり、1日目はリハーサル日ってことだ」

×  ×  ×
(フラッシュ)
 大学の教室でテストを受けている横田。
 T『リハーサル日』
 周りは必死に答案にペンを走らせるが、問題を眺めて余裕の表情の横田
 T『本番』
周りよりも早く解答を終える。立ち上がり、教壇の試験官に解答用紙(裏向きになっている)を差し出す。試験官、横田の解答用紙を表に返し、すべての問題にしっかり解答しているのを見て驚く。余裕の表情で教室を出る横田。
×  ×  ×

×  ×  ×
(フラッシュ)
 大学のテニスコートで、試合をする横田。
 リハーサル日:対戦相手にスマッシュを打たれ、打ち返せないが余裕の表情。
 本番:対戦相手のスマッシュを打ち返して勝利。周りで女の子が歓声をあげている。
×  ×  ×

 ※フラッシュについて、リハーサル日・本番を左右の画面で一緒にうつしつつ、リハ→本番、の流れでそれぞれ流す。

横田N(2つのフラッシュに重ねて)「この不思議な現象は生まれつきで、俺はこのおかげでずいぶんいい思いをしてきた。テストの時は、リハーサルで問題を覚えれば本番では満点。大学から始めたテニスも、相手がどこに打ってくるか、リハーサルの時に覚えれば完全に攻略できる」

 横田、ラーメンの汁を飲み干して満足げなため息。まだカレーを片付けているテーブルを眺め、見下した様子で鼻でわらいながら、ひとりごとをつぶやく。

横田「毎日ぶっつけ本番で生きてるなんて、みんなかわいそうだな」

 横田、テーブルから立ち去り、ラーメンのトレイを持って歩きだす。歩いている姿に重ねてナレーション。

横田N「悪いことが起これば避ければいいし、いいことがあれば繰り返せばいい。リハーサルのある人生を送れる俺は無敵だ。人生楽勝!」

○会社・上司の席

 T『社会人一年目』

 横田は、上司のデスクの前に立っている。横田の上司、デスクに座ったまま、書類を机に叩きつけながら怒鳴る。

上司「おい、ふざけてんのか?! ちゃんと準備しておけと、あれほど言っただろ! 俺に恥をかかせやがって!」

横田「す、すいません……! あの、一応準備はしていたんですが……」

上司「一応、じゃねぇんだよ! ロクな受け答えもできねぇで、準備してきたなんてぬかすんじゃねぇ!」

○(回想)会議室

 4〜5人が参加している、クライアント同席の打ち合わせ。クライアントがアキラに質問する。

クライアント「ではこの案について、横田さんはどう思われますか?」

横田「どう思う……? えぇっと……」

 横田、周りを見渡しながらしどろもどろになり、笑ってごまかそうとする。
 上司、イライラした様子でため息をつく。

○同・上司の席

上司「入社試験でトップだったからプロジェクトに抜擢したってぇのに、とんだ見込み違いだったよ!」

横田「すみません……リハーサルでも本番でも、なんて答えるのが正解なのか、わからなくて……」

上司「リハーサル? 何言ってんだ? ってか仕事に正解なんてねーんだよ、テストじゃあるまいし! 自分の頭で考えろ! だいたいお前は、仕事に対する姿勢がなってないんだよ。とりあえず失敗しなければいい、って思ってんだろ? 向上心がまったく見られない。ちょっとは努力しようと思わないの?」

横田「努力って、どうやるんですかね……?」

上司「はぁ? お前なめてんのか!!!」

 上司、書類の束を横田の顔めがけて投げつけるが、横田はひょいっとかわす。それを見て、ますます苛立ち横田を睨みつける上司。横田は、「やばい……」という表情で上司を見つめる。

上司「あぁ〜〜〜もう!!!」

 バァン! とすごい勢いで机を叩く上司。その前で萎縮しながら立ち尽くす横田。

○会社・横田の自席

 自席に戻る横田。ため息をつき、パソコンをひらく。
横田N「学生時代は無敵状態だった俺だが、社会人になってから、リハーサルを経て本番に臨んでもうまくいかないことが多くなった」

×  ×  ×
(フラッシュ)
 会議室Aにて、3人で社内ミーティング中。先輩Aが横田に話をふる。
先輩A「じゃあ、横田の考えを聞かせてくれ」
横田「俺の考え……? えぇっと……」
×  ×  ×

×  ×  ×
(フラッシュ)
 会議室Bにて、同期5人と先輩Bにてグループワーク。ホワイトボードにはアイデアが書いてあるふせんがいくつか貼ってあり、手元にも全員ふせんを持っている。
先輩B「じゃあみんなで、何でもいいから思いついた意見を言い合いましょう」
横田「何でもいい……? えぇっと……」
×  ×  ×

横田M「正解のない問いにどう答えたらいいのか、わからない。
リハーサルがあるから大丈夫と思って、努力なしに何でもこなしてきた俺は、努力の仕方もわからない。どうすりゃいーんだ……?」

×  ×  ×
(フラッシュ)
 上司に怒られてひたすらあやまっている映像に重ねて、上司の怒鳴り声が延々聞こえる。
上司「おい横田!」「何度言えばわかるんだ!」「仕事なめてんのか?!」「お前ふざけてんのか!」「横田!」「何度言えば」「なめてんのか」「ふざけてんのか」……
 上司の声がフェードアウトしていく
×  ×  ×

○(日替わり)会社・上司の席

 横田、上司のデスクの前に立ち、無言で辞表を差し出す。上司、辞表を横田の手からひったくり、上着の内ポケットにしまう。席を立ち、横田の横を通り過ぎながら肩を叩いて、からかうような調子で、

上司「おつかれさんでした〜」

 横田の横を通り過ぎていく上司。うつろな表情の横田。

○(日替わり)横田の自宅・ベッド

 部屋着姿でベットに寝転び、ひたすらスマホでYouTubeを見る横田。部屋は散らかり、荒れ果てている。YouTubeに飽きた横田、スマホを置いて伸びをする。

横田「今日は、木曜かぁ……あれ、今日って1回目だっけ、2回目だっけ……?もうわかんねーなぁ」

 横田、壁のカレンダーを見る。

横田「会社やめて3ヶ月か……。YouTube見てゲームしてテレビ見て、1日中だらだらして……毎日おんなじことの繰り返し。あ〜ぁ、1日が10回くらいあったら、もっと失敗しない人生送れたのかなぁ〜」

 横田、ため息をつきながらテレビをつけると、WBSでイノベンチャーズ列伝のコーナーが流れている。そこには、起業家・真鍋とキャスターの対談の様子が映っている。

○テレビ映像

T『宇宙ビジネスの未来に挑戦する若き起業家! 株式会社テックスペース 代表取締役 真鍋薫』

キャスター「真鍋さんは、人と違った体質をお持ちだと伺いましたが?」

真鍋「ええ。実は僕には、1日が2回やってくるんです。月曜が2回、火曜が2回……で、一週間は14日ある。幼い頃からずっとそうでした。」

キャスター「にわかには信じがたいお話ですが、医学的にも証明されている、と……?」

真鍋「はい。先日番組でご一緒させていただいた、脳科学者の中田先生に診ていただきました。どうやら、十億人に1人か2人くらいの割合で僕のような人間はいるらしいですよ」

○横田の自宅・テレビ前

 横田、食い入るようにテレビを見つめながらつぶやく。

横田「こいつも俺と同じなのか……同じなのに、なんでこいつはうまくいって、俺はうまくいかないんだ?」

 悔しそうな表情の横田。テレビの映像に切り替わる。

○テレビ映像

キャスター「先日発売の著書でそのことをカミングアウトされていましたが、ネットでずいぶん話題になりましたよね。『あなたが成功したのは、その特殊能力のおかげなんじゃないか?』と」

真鍋「そういった意見は多数いただきましたね。しかし私は、たとえ毎日が1回ずつしか来なくても、成功する自信があります。
より良い未来を手に入れるには、失敗を恐れずに行動を起こすしかないんです。それができなければ、同じ1日が100回来たとしても、何も成し遂げることはできないんじゃないでしょうか?」

○横田の自宅・テレビ前

 真鍋の言葉を聞き、ハッとした表情になる横田。

×  ×  ×
(フラッシュ)
テレビをつける前に、横田がひとりごとを言っているシーン。
横田「あ〜ぁ、1日が10回くらいあったら、もっと失敗しない人生送れたのかなぁ〜」
×  ×  ×

 呆然とした表情で横田はつぶやく。

横田「んなわけねぇだろ……何も変わんねーよ、このままじゃ……!」

 横田、勢いよく立ち上がり、家を飛び出す。

横田「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

○道端A

横田「うわあああぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 横田、タガが外れたようすで叫びながら全力で走る。道端で大型犬(怖めなやつ)を連れた人と遭遇。

犬「ウーーーー、ワンワンワン!!!!!!」

 ものすごい勢いで犬が吠えてくる。

横田「ヒィ!」

 横田、一瞬ひるんで後ずさるが、意を決して、

横田「ワンワンワン!! グルゥゥゥ……ワン!!!」

 吠え声の真似をしながら犬に近づき、犬を威嚇。犬は鳴きやみ、後ずさる。飼い主もおびえた表情で横田を見つめる。
 横田、息を整えて犬と飼い主の横を早歩きで通り過ぎる。その後ろ姿を不可解な表情で見つめる飼い主と犬。

○道端B

 横田、肩をいからせながら早足で歩き続ける。そこに、不良3人組が登場。ニヤニヤしながら横田に近づき、横田を囲む。

不良A「おにーさんさぁ、お金貸してくんない?」

横田「はぁ?」

 犬との戦いで気がたかぶっている横田、不良Aをじろりと睨む。

不良B「はぁ? じゃねぇよお前なに調子乗ってんの? あぁ?」

横田「ヒッ……! す、すいません……!」

 不良Bに胸ぐらをつかまれ、おびえる横田。不良A・不良Cも、横田にじりじりと距離を詰めてくる。
 横田、怯えながら空をみあげて、驚いた表情になる。

横田「あっ! UFO!!」

不良B「え?」

 横田の胸ぐらをつかんだまま、不良Bは振り返って空を見る。

横田「ほらあれ、見えませんか? あっ、動いてる! すごい!!」

 横田は空を指差す。不良B、横田から手を離して横田の指差す方向を見る。不良A・不良Cも、そろって同じ方向を見る。

不良B「どこだよ?」

横田「あのビルの左上に、ほら……」

 不良3人組は空を見ながら、「お前見えるか?」「あれじゃね?」など言い合っている。横田、その様子を見ながら静かにあとずさり、距離をとったあと一気に駆け出す。

不良B「あっ! おい待てお前ふざけんな!!!!」

 必死に逃げる横田、追う不良3人組。

○公園

 横田、息を切らしながら公園へ。公園内の池のそばに立つ。

横田「なんとか逃げ切った……」

母親「あぁっ!!」

 叫び声のあと、ボールが横田の左足に当たる。

横田「いてっ!」

 思わず左足を持ち上げ、当たったところを確認しようとする横田。そしてバランスを崩し、池に落ちる。

横田「わあぁぁぁっ!!!」

 バシャーン! と派手に水しぶきをあげながら池に落ちた横田、池の中に尻餅をつくような感じで座りこむ(水位は浅い)。

母親「申し訳ありません!」

 母親とボールを持った子どもが池のそばにやってきて、横田に謝る。

横田「あぁ、大丈夫です……」

 横田、池から出る。日当たりのいいベンチに向かい、上の服を脱いでしぼり、ベンチに干す。ズボンは着たまま裾など絞れるところだけ絞り、ベンチに座ってしばし休むことに。
 缶コーヒーを飲みながら、ひなたぼっこする。楽しげに遊ぶ子どもの声や、鳥の鳴き声が遠くで聞こえる。

横田「外出たの、久々だな……いい天気」

 横田、ぼんやりと空を見上げながらつぶやく。

横田「はは、ははは……」

 笑いだす横田。笑いが止まらなくなり、

横田「なんだ、1回目でもやればできるじゃん、俺。はははっ!」

 ベンチで一人、笑い続ける横田。

○(日替わり)企業・面接会場

 部屋のドアには、「(株)ISTテクノロジー 中途面接」という張り紙が。
 スーツに身を包んだ横田は、緊張しながらもキリっとした表情で、面接官の前に座っている。
 面接官は手元の履歴書を見ながら、

面接官「尊敬する人は、起業家の真鍋氏……彼の言葉に感銘を受けて、自分を変えたいと思った、と……」

 面接官、横田の方をみて、微笑みながら質問をする。

面接官「では横田さんに伺います。もし、真鍋氏のように毎日が2回ずつ来るとしたら、あなたならどう生きますか?」

 横田、視線を落として少し考え込み、息を吐く。
 ぱっと顔を上げ、自信に満ちた表情で、

横田「僕は……」

 横田の自信に満ちた表情が大きく映ったところで<完>