人の心を動かす言葉とは『おちゃめに100歳!寂聴さん』(瀬尾まなほさん)

人はいざ書こうとすると良い風に書きたくて気取ってしまう。
ありのままの自分をさらけ出して書くということはすごく勇気がいることなの。それができる人が人の心をうつことができるのよ。あなたは気取らないし、ありのままの自然体で書くでしょう。そこがとてもいいの。なかなかできないことなのよ。

瀬戸内寂聴さんの秘書・まなほさんは、言葉でうまく思いを伝えられないときには、手紙を書くという。
その手紙を見て、寂聴さんが言った言葉だ。

学者や政治家の話がわかりにくいのは、難しいことを難しい言葉で話しているからだ。

なぜそんなことをするかというと、自分を賢く見せたいから。(もちろん、そうでない人もいるだろうけれど)

良く見られたいと思って、つい格好つけてしまう。
これは、文章を書く場面でなくても、日常でよくやってしまいがちだ。
無意識のマウンティング。

でも、自分では隠しているつもりでも、それってバレバレなのだ。はたから見ると。

そのことに気づいたとき、良く見られようと着飾りまくりだった20代の頃の自分が、そりゃもう恥ずかしくて、痛い奴だった……と激しく後悔した。

私は「仕事ができる」ふうに見てもらえることがあったり、そう見られたいと思ってふるまってしまうこともあるが、これは「しっかり者ぶっている」だけ。

仕事だからやらないと! と思っているだけで、本当は、だらけるのが大好きだし、抜けているところも多い。なんなら毎日遊んで暮らしたい。

 

こんなエピソードも聞いたことがある。
前職で、デジタルコンテンツ(WebやCG等)のクリエイターを育てる大学のスタッフをやっていたときのことだ。

デジタル系なのにデッサンの授業があって、何でなのかと思ったら、「主観を排除して、見たものをありのままの姿でとらえる」というのは、コンテンツを創る上で大切な視点なのだそうだ。

しかし、「ありのままを描く」のはとても難しい。同じ瓶の絵をデッサンしたとしても、違った絵に仕上がるのは、技術の差だけではなくて、主観が入ってしまっているから。

自画像を描くと、みんなだいたい実際の自分よりちょっといい風に描いてしまうそう。

 

まなほさんの文章は、ありのままで、まっすぐで、飾りがない。驚くほどに。
これは、本人が飾らない人だからだろう。きっと会ってお話しても、本の印象そのままなんだろう。

明るくて、裏表がなくて、真っすぐで、思ったことをなんでもぽんぽん言う。そして、とても愛情深い。そんな人なんだろう。

本を読んだだけで、何をわかったようなことを……と、思うだろうか。

でも、文章には人となりが現れるのだ。本当に。

私は今、天狼院書店というところの、ライティング・ゼミに通っている。
そこでは、毎週フリーテーマで、一本の原稿を提出する。

フリーテーマとなると、自分自身のことを書く、エッセイ形式になることが多いのだが、書くたびに、自分があらわになる感覚があり、最初は恐かった。

提出した原稿は、チェックされ、掲載OKとなると、Webサイト上に掲載される。つまり、多くの人の目にさらされるわけだ。

飾った言葉だらけの文章は、チェックが通らない。

思ったことをありのまま書いたものの方が、掲載されるし、ほかの人の原稿を見ても、素直に書いていると感じるものに、やはり心を動かされるのだ。

自分の底の浅さや、未熟さ。隠したかったそれらも、文章に書くようになった。
そうしたら、その文章に、少しばかりの反応をもらえることも増えてきた。

なんだ、別にかっこつけなくてもいいんじゃないか。

そう思ったら、肩肘はってキリキリと生きていたころの自分は無駄なことをしていたな、と楽な気持ちになった。

好かれたくて、良く思われたくて、ダメなところを隠してきた。

でも、ひとつも傷がない、完璧なものに、人は惹かれるわけではない。

良いところばかりの人間なんていない。

自分だって、他人だって。

だから別に隠さなくてもいいんだと、今では思う。

 

本の中では、寂聴さんが、66歳も年下のまなほさんを心のよりどころとして、頼りきっているんだろうなと感じられる。

どこへ行っても、先生、先生と丁重に扱われる中で、遠慮せずに自分の意見を言い、まっすぐ気持ちをぶつけてくるまなほさんだからこそ、寂聴さんも気を使わずに頼ることができるんだろう。

パンを毎朝焦がしてしまったり、法話のあとのお食事で、自分ばっかり食べて! と怒られてしまったり。そんなエピソードもつつみ隠さず、書いているまなほさん。

たまに寂聴さんのことを「ガミガミおばば」なんて表現したりして、そんなこと書いていいのか?! とびっくりするけれど、寂聴さんへの深い愛情や尊敬が、そこかしこに散りばめられていて、お互いに本音を言い合える、信頼できる仲なんだろうと感じる。

テレビで寂聴さんと秘書のまなほさんを見たとき、どうしてこんなに若い女の子を秘書に選んだんだろうと思ったが、本音も弱いところもダメな部分も隠さずに、まっすぐなところに惹かれて採用したんだろうな、と思った。

 

飾らない言葉、飾らない人に、人は惹かれる。

ええかっこしいなところが、まだ抜け切らない私。
このことを常に心に留めて行きたいと思う。


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